有松絞り

日本の絞り染めは遠く、奈良時代までさかのぼり、中央アジアから中国シルクロードを越え、海を渡ってきた。鹿ノ子絞りの原形がそれであるといわれている。 その後、幾多の技術革新・開発研究がくりかえされ、江戸時代の有松でその全容がほぼ出揃ったとされている。 更に近代に入ると、嵐絞り、抜染絞り、箱染絞り、機械くも絞りなど、新しい技法の追求によって、多彩な表現を生み出すことになった。 今日まで100種を越える技法がここ有松で生まれ、育み、高められた。 そうした先人の歴史を基にさらに新しい表現力と方向性を磨きあげて、新たな絞りの可能を探しています。

 

        1900年 パリ万国博覧会に木綿絞り生地を出展 銅賞を受賞

 

        1910年 日英博覧会に出展 銀賞を受賞

 

有松絞りの歴史

有松町史によれば「慶長十五年(1610)名古屋城築城の頃、築城に参集してきた諸藩の人々の内に九州豊後(大分県)の者が珍しい手ぬ ぐいを持参していることに気をとめた竹田庄九郎がその製法のヒントを得たと言い伝えられているらしい。 当時東海道は、京と江戸を結ぶ幹線道として、ようやくその重要性が認識され、 尾州藩の基礎も次第に固まりつつあった。移住してきた人達はまだ第一陣八名、 第二陣七名、合計でも十五家族と少なく、周囲の耕地も乏しく、農業で生計を立てる までには到らなかったものと考えられる。新設されつつあった東海道の築造工事人夫として働き、街道筋の軒先で「ワラジ」などわずかな品を売り、屋敷廻りで取れる少しの作物を口にするありさまであったと推測される。この窮状をみかねた幕府は、移住させる時の条件であった譜役免除のほか、記録には見られないが、たぶん米麦の実物支給も相当の期間実施したのではなかろうか。 第一陣が来村してから十数年が経ち、何とか飢えることなく、十五家族の生活に見通 しが立った慶長二五年(1620)過ぎ頃、第三陣を呼び寄せることにしたのではなかろうか。この頃には大阪夏の陣が徳川の勝利で終わり(1620)、世情も安定に向かい出した頃と事情が一致する。第三陣はこの安定を見た上で寛永二年(1625)、阿久比から呼び寄せたものと推測出来る。この時、先住の一五名は尾張藩に対し、一層の優遇策として譜役務ご免と米麦の尚しばらくの支給延長と、家屋の建築用材の支給を願い出て許可されたものと考えられる。移住させてから十五年以上が過ぎ、実直に精を出す村民をまのあたりにした尾州藩は、それまでの労にむくい、何よりも家康公の初志である生母の住んだ阿久比の人々に恩義を返したい、との願を新村有松に注いだものと考えられる。神君家康公の遺志をここに返す為との特例を表看板にする新村優遇策に異を唱える者などあろう筈もなく、この優遇策は維新まで機能し続けたもののようである。

更に第三次移住までに第一陣の人々の内、「竹田庄九郎」の努力の積み重ねによって、「括り染め」の試作改良も進み、軒先での販売も除々に増大してきたので移住に踏み切ったものと推測される。生産と販売の見通 しを立て、藩に庇護を願い、万全 の対策を建ててから呼び寄せる手だては見事というほかはない。(この周到な配慮に竹田庄九郎の手腕・人柄が偲ばれる。) 生産に用いる木綿布は、当時は知多郡一円や伊勢国、藤堂藩(現松坂市)方面 から、 染料の藍は阿波国(現徳島県)から仕入れたが、わずかな仕入れでも現金を必要といした筈で、その支払い保証も尾州藩が肩入れしてくれたものかも知れない。 阿久比から移住してきた第三陣が腰を落ち着けた寛永十年(1633)頃から、有松絞りが全村挙げて取り組み始められたと考えられる。 東海道に町人が数多く通りはじめたのは寛永十五年(1638)頃からで、伊勢参りが全国的に流行のきざしを見せ始めるが、この少し前頃から参勤交代の制が確立したようである。諸国の大名が、江戸詰めを終え、帰国する時に有松に立ち寄り、国元への土産として絞の反物や手ぬ ぐいを買い求めたのが有松を有名にした始めという。

 

         先祖嫁入り道具の「駕籠」 

 

 有松の町は、1608年慶長13年東海道筋に生まれた町であり有松絞りの開祖竹田庄九郎始め8名(弊社祖先含む)の知多阿久比町より移住者によって誕生しました。 以来約400年絞り生産を一貫して業とし、町全体が絞り業者のみで形成されて来た為に、江戸時代の町屋建築が昔のまま数多く残されています。 有松絞は、尾州藩御用として納入し、諸大名との交際に土産の品として好んで用いられたが、同時に尾州藩の保護政策をうけて有松以外の土地での製造卸業を禁じた事と、東海道を往来する旅客の土産品として珍重された事が、有松絞りを支えて来た大きな柱であった。

 

 

         白影絞り

 

         嵐絞り重ね七宝柄

  

         山周筋絞り

 

 

                      手くも絞り